学歴なんかどこ吹く風  中卒社長、大谷勝彦氏(58才、大谷社長)の知恵
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※記事中の会社名・団体名・所属・役職等は取材当時のものです。
平成12年6月1日号
大西リポート088
 

学歴なんかどこ吹く風


 
中卒社長、大谷勝彦氏(58才、大谷社長)の知恵

三重苦

 大学への進学が高まる中、高校へもいけず中卒で世に出ながら苦労に苦労を重ね、日本一になった経営者がいる。 切りもちで全国ナンバーワンとなった佐藤食品工業(新潟市) の佐藤功社長、創業十年でまいたけ日本一となった雪国まいたけの大平音信社長、二千四百社もの中小企業がひしめく燕市で先頭を走る遠藤製作所の遠藤栄松社長。日本一どころか世界一になったバドミントンラケットメーカー、ヨネックスを創業した米山稔会長がそうだ。「学歴社会、何するものぞ」といった侍達である。 全国に七千店もあるハンコ屋の業界で利益ナンバーワンになった大谷(亀田町) の大谷勝彦社長(五十八才) も中卒である。 特に大谷社長の場合は学歴なし、カネなしに加え、「好酸球性肉芽腰」という難病にかかり、二十年間、入退院を繰り返した。三重苦を克服しての日本一だから、値打ちが高い。一「正直いって若い頃は劣等感を持ちまLたよ。青年会議所に入った時に強く感じました。あそこには大卒がうようよいましたからね」 その中卒社長も今、年商十三億円、経常利益二億円、社点二百八十四人 (パート含む)の会社の経営者となった。
 学歴とはいったい何ぞや、である。

金はあずかりもの

 中卒社長には学歴をカバーする知恵と行動力がある。雪国まいたけの大平社長は「人間に能力の差はない。あるとすれば努力の差だ」といって同業他社二千四百社を追い抜いた。佐藤食品の佐藤社長は「もし目標が達成でき20なかったらオレは坊主になる」と宣言し、一に行動、二に行動を実践してきた。 ヨネックスの米山会長は「ピンチはチャンスなり」という確固たる経営哲学を持ち、いばらの道を切り開いてきた。大谷の大谷社長も独自の経営ノウハウを持つ。

その1
 ご家族ボーナスという制度をつくり、社長が菓子折りと感謝金を持って全社点の両親を訪ねる。会社の話をし、親の悩みも聞く。一軒一軒まわるのを苦としない。

その2
 パートを「パートナー」と呼び、社員を対象に決算説明会を開く。身内を金庫番にしない。すべてオープンなのである。「社長が私腹をこやしていると思われると社員のやる気がおきないからね」

その3
 大谷さんは二年後の六十才で退職し、退職金二億円をはたいて障害者向けの施設をつくる。「お金は社会からの預かりものだから世のため人のために使いたい」というのである。

学歴より知恵

こんな話がある。
北海道の小学校で先生が子供に質問した。

「氷がとけたらどうなるでしょう?」

ハーイと手を上げた学者の子供が答えた。

「水になります」

もう一人「ハーイ」と手を上げた子供がいた。

大工の子だ。「氷がとけたら春がきます」

経営者とは氷がとけたら水になると考えるのではなく、春がくると発想できる人だろう。

大谷さんも春が来るタイプだ。職人による一個一個の手づくりが、常識だったハンコ屋の世界に「他店舗展開」と「機械化」という新しい手法を導入し、全国トップになった。
 ハンコの注文が減り始めると、今度は結婚式場をまわって招待状や席次表を印刷する仕事をとった。一回百枚程度の小さな注文なのでだれも手を出さないが、大谷さんの発想は違う。「小さな市場の大きなシェアを狙え」である。
 今年は百枚で千円の名刺印刷業を始めた。印章業、プリントショップ、カメラ店の複合ショップも計画するなどこの人は、知恵が次から次とわいてくる。
 経営は学歴ではない。知恵であることを実証している。

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