男の美学今いずこ 倒産したフロンテックスの上田一喜社長、倒産したピコイの近藤建社長
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※記事中の会社名・団体名・所属・役職等は取材当時のものです。
平成11年11月1日号
大西リポート077
 

男の美学今いずこ


倒産したフロンテックスの上田一喜社長(58才)
倒産したピコイの近藤建社長(56才)

土下座

  それはある日突然やってきた。九月三十日の夕方、フロンテックス(新潟市)の社員がいつもどおり仕事をしているところへ弁護士がやってきていきなり「全員外へ出て下さい」といった。
 何だろうと思いながらも外へ出ると正面ドアに「破産」と「持ち出し禁止」の貼り紙を張り、ガチャンとカギをかけられた。
 フロンテックス倒産の瞬間だった。社員は狐につままれた感じだった。普通なら社長から社員にちゃんと説明があるのに何にもなかった。
 五日後、同社で開かれた債権者への説明会でじつに不可解な事実が次々とでてきた。
 フロンテックスの年商が八億七千万円というのに負債額が十七億円もあるというのである。これは多過ぎる。裏に何かある。
 そして一日早く倒産したアスカ(新潟市)との融通手形が四億円もあったことが知らされた。「我が社は下請けはしない」と公言していた誇り高い上田一喜社長(58才)が土下座して謝った。「取引先の倒産で債権が焦げつき手形が不渡りとなった」「おかしい、おかしい」と思っていたら十月六日、爆弾が落ちてきた。ピコイの倒産である。

簿外債務が発覚

  十月六日午後五時。新潟市の弁護士会館でピコイの近藤建社長(56才)ら役員五人と弁護士三人が「ピコイの和議申請が受理されました」と記者会見で発表した。
 負債額は百億円。借金の30%をカットし、残り70%を七年間で返すという。
 倒産の原因は簿外債務二十億円が発覚し、資金繰りに窮したためと説明した。その相手はフロンテックスに四億円、アスカに八億円、日本アクシス(盛岡)に三億円、湘南オートメーション(横浜)に一億円で、直接貸付けや手形の裏書きである。驚いたことにこのことは財務担当の鬼梅清専務が独断でやったとし、同氏は九月二十五日付けで引責辞任し、会社としては法的責任を検討中であるとした。「こりゃおかしい」と思って筆者は質問した。「弁護士さんにではなく近藤社長に答えて欲しい。こんな多額の債務を社長が知らないといっても世間は信用しない。ホントに知らなかったのですか?」
近藤「ハイ、まったく知りませんでした」
「もう一度聞きます。ホントに知らなかったのですか」
近藤「ハイ、知りませんでした」
ああ!読者はこれをどう受け止めるか。

ふんけいの交わり

  フロンテックスを創業した上田一喜社長はひところベンチャーの旗手といわれ、飛ぶ鳥落とす勢いがあった。白蟻屋といわれたピコイより格が二つも三つも上だった。だが上田氏は経営者というより技術屋タイプ。悪くいえば世間知らずのおぼっちゃんだ。
 満を持して発売した塩分濃度計が売れず、多額の借金をつくったため北越銀行が見限った。倒産寸前のピンチを救ったのがピコイの近藤社長で、八千万円ほどの資金を援助した。
 二人は異業種交流グループ「あさひ研究会」の仲間だった。以来、二人はふんけいの交わりを続けている。
 従って今回、ピコイがフロンテックスに支援した四億円は上田氏と近藤氏のつながりによるものであり、鬼海専務の独断であるはずがない。
 筆者の想像では、鬼海専務の方から「私がすべて泥をかぶります」といい出したのではないか。鬼海氏とはそんな人である。
 近藤氏が信望している坂本龍馬ならこんな場合、どうするだろう。部下を犠牲にする前にまず自分が犠牲になるのではないか。
 栄枯盛衰は世のならい。経営に浮き沈みはつきものだ。だがフロンテックスのように社員三十八人に黙って倒産したり、ピコイのように腹心の部下を犠牲にするのはいただけない。近藤氏が日頃口にしている男の美学はどこへいった!

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