月岡だけがなぜもてる?ナンバー2「ホテル清風苑」にみる経営者は元学校の先生 樋口清社長
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※記事中の会社名・団体名・所属・役職等は取材当時のものです。
平成10年9月1日号
大西リポート059
 

月岡だけがなぜもてる?


ナンバー2「ホテル清風苑」にみる経営者は元学校の先生
樋口清社長

水清ければ魚住まず

熊さん
「ご隠居。ひとつ教えてもらいたいことがあるんですが」
隠居
「おお、何だね。熊さん。改まって」
熊さん
「イヤ、ナニ、月岡温泉になんであんなに客が入るかってことなんですよ。昔は村杉温泉や咲花温泉と変わりがなかったんですよ」
隠居
「それはだな。よそ者が頑張っているからだよ」
熊さん
「よそ者?」
隠居
「そう。月岡温泉には30数軒の旅館があるが、この3年間で5軒が店じまいした。皆、地元の経営者だ。ところが月岡で一番大きい「ホテル泉慶」を創業したのは聖籠町出身の飯田正晴さん(88才)だ。ニ番手の「ホテル清風苑」の樋口清社長は学校の先生を25年もやったあと、今のホテルを始め大成功した。異業種からの参入だ。三番手の「冠月」は新発田の石井建設が母体だ。よそ者の頑張りによって今の月岡温泉があるんじゃよ」

熊さん
 「なるほどね。何かを改革するのは内部の人間じゃなく外部の力なんですね」
隠居
 「まだある。月岡は芸者で売ったね。50軒の置屋に250人もいる。モーテルも5軒ある。月岡の枕芸者ということばもあるくらいだ。つまり月岡の経営者は人間の本性を見抜いてるんだよ。商売上手っていえるね」「水清ければ魚住まずっていいますね」「いいことば知ってるね。逆に清らか路線で客を失ったのが瀬波温泉だ。瀬波も昔は芸者で売っていたんだが、天皇陛下がきて以来、歴史とか文化を言い出すものだから客が離れていったよ」

メーンは山形の殖産銀行

 月岡温泉で「ホテル泉慶」を横綱とするなら大関にあたるのが「ホテル清風苑」だ。年商26億円、従業員180人の規模である。社長の樋口清さん(65才)は新発田農高で体育の先生を25年もやったあと49才でこの世界へ入ったという変わり種である。収容人員10人ほどの小さな旅館を収容人員600人の大ホテルに仕立てあげた人でもある。「学校をやめて2年間、どんなホテルをつくるか研究しました。東北新幹線の開通で東北の温泉旅館がにぎわっているのを見て、上越新幹線も開通したのだから新潟にも客がくると判断しました」そこからがおもしろい。当時の売上はたった1億円。そこへ六階建てのホテルを8億円でつくる計画を打ち出したのである。 「どこの銀行へ行ってもまともに取り上げてくれませんでした。地元の人で手を貸してくれる人などだれ一人いませんでした」「ところがたった一人いたんですよ。殖産銀行の山の内支店長がカネを貸してくれたんですよ。本人、このホテルに生命をかけるってまで言ってくれたんですからね」昔から商売の恩は石に刻め、商売の仇は水に流せという。いま、第四銀行がきても北越銀行がきても、すべて断わり清風苑のカネは山形の殖産銀行がまかなっている。そういえば樋口さんは社員が辞める時「あなたの良さを生かしきれなくてごめんなさい」と謝るんだそうである。樋口さんとはそんな人なのである。

お客様は狼です

 「お客さんは神さまっていうけど、それはネクタイしめて玄関入ってくる時だけ。いったんふろ入って酒飲めば神さまが狼に変身するんだから」と樋口さんは笑う。高校出たての女子社員に「おい、ねぇちゃん。オレの部屋へ来いよ。かわいがってやるぜ」と抱きつく客もいる。そんな時の対処法を樋口社長はコト細かに一人一人に教える。それができないと社員が辞めるからである。旅館経営のキーポイントだ。「基本はホスピタリティに徹することだ」という。相手は客ではなく、病人なんだから看護婦の気持ちで接するべしというのだ。女子社員が着物を着ているのにも理由がある。「外人と違って日本人には大根足、ガニまたが多いので着物なら隠せる。品も良く見えるでしょう」そんな社員や客が相手だから心休まることがない。
この16年間睡眠時間は1日4〜5時間程度。休日も年間3日間だけ。猛烈に働いてきた。「週40時間労働なんて、のんきなこといっていたら日本は滅びますよ。最近では日本人よりアメリカ人の方が働いているんじゃないですか」労働省のやっていることは「国のため、昔働け今休め」なんである。ああー、どこか狂っている。

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