銀行屋社長に何ができる! 第一測範製作所の丸山 敏英社長(58才)
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※記事中の会社名・団体名・所属・役職等は取材当時のものです。
平成8年4月1日号
大西リポート026
 

銀行屋社長に何ができる!


 
第一測範製作所の丸山 敏英社長(58才)

三年間の赤字十億円

 「よそ者に何がわかるか」「銀行屋さんのやることはしょせん、こんなもんだよ」「ま、社長失格だね」ネジゲージのトップメーカー第一測範製作所の丸山敏英社長(58才)に世間は容赦ない批判を浴びせた。心ならずも社長に就任したとたんにバブル不況に突入し、優良会社が赤字に転落したのだ。それが三年にも及んだ。三年間の赤字が十億円にものぼる。
 会社が赤字になると経営者はどんな心境になるのか?筆者は丸山社長に胸の内を聞いてみた。場所は新潟駅前の東急イン二階。時間は午後九時三十分。一次会のあとだったので話す方も聞く方も酔顔もうろう。「内から外から遠慮なく矢が飛んできたね。特にこの会社はオレがつくった会社じゃなく、一時あずかっているような立場だから針のむしろに座っているような心境だった」「でもオレは割り切った。決算というのは一年間の通信簿。それだけで第一測範の経営がどうのこうのいえない。重要なのは財務バランスだよ。それがしっかりしていたのでこれくらいの赤字ならビクともしなかったね」第一測範は三年間で十億円失ったとはいえ、自己資金がまだ二十五億円もあり、自己資本比率は50%もある。そして8年3月期決算では4年振り、黒字に転換する。やっと元の姿に戻るのだ。

なりたくてなった社長じゃない

 丸山氏は銀行出身社長である。北越銀行に32年も勤めたあと昭和63年に第一測範へ入社した。銀行からの出向ではなく、キッパリ退職してから入社したのだ。創業者の故・木村哲男社長が丸山氏にほれこんだのである。最初のポストは総務部長。出世しても取締役がつくくらいかな?とみていたら世の中何が起きるかわからない。入社二年目に木村社長が50才の若さで急死。ナンバー2の渡辺得一常務も病気で入院。晴天のへキレキが相次ぎ入社四年目で丸山氏におはちがまわってきた。当時の第一測範は年商26億円。経常利益が五億三千万円あり、キラリと光る技術型企業として全国に名が通っていた。「そんな技術系の会社の社長に銀行屋さんがなるなんて……」と世間は危慎した。案の上、就任したその年からどしゃ降りの大雨。会社は赤字となった。苦吟坤吟しながらこの三年間を我慢してきた。その支えは何だったのか?ひとつは銀行時代に学んだ財務バランス論。もうひとつは開き直りである。「なりたくてなった社長じゃないぞ」「ガタガタいうな!」

快挙

  知る人ぞ知る話し。第一測範へ入社して二年目に丸山氏は会社に莫大な利益をもたらした。第三者割り当て増資をして十九億円ものカネを集めたのだ。古巣の北越銀行を始め、興銀、安田信託、日本生命、明治生命へ一社一社歩き、出資を頼みこんだ。会社にそれだけの魅力があったとはいえ、丸山氏がいなかったら十九億円のカネはなかったのである。建設したばかりの新工場のカネはこの十九億円でほとんどまかなった。この快挙に社内はびっくり仰天し、世間はあっけにとられた。「田舎の中小企業になぜそんなことができるのか」と。だから丸山氏はロにこそ出さないが、腹の中で思っているに違いない。「三年間で十億円すったってガタガタいうな。まだ九億円も残っている」陽気できさくな丸山氏はこんな自慢話はしない。口にするのは今なお北越銀行を「うちの銀行」というくせ。「ついつい口に出る。辞めて8年もたつのにねえ。北越の高田頭取にほめてもらわなきゃね。愛着をもってるんだから」人の恩や義理人情を何よりも大切にする人間である。

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