日本一の秘訣をさぐる 決め手は経験とカンの職人技術 雪国まいたけ 大平社長(46才)
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※記事中の会社名・団体名・所属・役職等は取材当時のものです。
平成6年12月1日号
大西リポート009
 

日本一の秘訣をさぐる


「決め手は経験とカンの職人技術」
雪国まいたけ 大平社長(46才)

もの静かなタイプ

 カラッとした秋空が広がった十一月のある日、新潟県・六日町の「雪国まいたけ」を訪問した。僅か10年でどうして日本一の会社になったのか?社長の大平喜信氏に会ってその秘密をさぐるためである。 関越高速道の六日町インターを降りるとすぐ目の前に13階建てのビルが飛びこんでくる。雪国まいたけの本社である。「こんな田んぼの中に場違いなビルをぶったてるなんて、ここの社長はよほど成金趣味なんだな」と心につぶやきながらドアをあけた。応待に出たのは番頭格と思える太田輝良管理本部長だ。人のよさそうな人物で、第四銀行出身と聞いた。太田さんの案内で三階の応接室に通される。20人は座れる豪華な大部屋だ。待つこと三分。大平社長が現れた。
 一代で財を成す人物はよはどのやり手。口角泡を飛ばすようにポンポンとまくしたてる人が多い。ヨネックスの米山社長、パール金属の高波社長、佐藤食品の佐藤社長が代表的だ。まして大平氏は46才というからそれ以上のバリバリ派かと思ったら意外や意外至ってもの静かなタイプなのである。体格も小さい方。体重55キロしかない。一見ひ弱そうな人物がどうして、まいたけで日本一になったのか?

気違い男(?)

 しばしの雑談のあと、ズバリ切り込んだ。「全国シェア60%の雪国まいたけがさらに生産を二倍にする工場をつくっていますね。もし予定通り売れなかったら、まいたけが全国にジャブジャブあふれ価格が大暴落します。シェア10%の会社ならともかく60%の会社だけに気でも狂ったかと思います」
 ぶしつけな質問だけにムッとするのでは?と思ったが大平氏は軽く受け流した。「慣れているんですよ。気違い扱いされるのには。こんな田舎にバカでかいまいたけ工場をいくつもつくったんですから、その都度周囲からいわれました。あの男はバカだ、チョンだと。ハッハッハ」 二番目の質問は今回訪問の本題。10年でどうして日本一になったか?である。大平氏は明快にこたえる。「まいたけをつくり始めた昭和58年から五年間、私は毎日まいたけとにらめっこして生産技術を勉強しました。そしてついに単量600グラムの生産技術を確立できたのです。同業他社が単重400グラムだった時代ですから生産性が50%も高い。よし、これならいける。このノウハウは金に換算すれば50億円の値打ちがあると社員に言ったものです。もっとも社員は目をパチクリしていましたが」

不可能はナシ

「単重」というのはひとつの箱(ブロック)にどれだけまいたけが採れるかという目安になるもの。手間ヒマも原料費も人件費もすべて同じだから単垂が50%多いとその分がそっくり利益になる。同社はその利益分を製品の値下げ分にまわし、全国の量販店を開拓した。短期的に全国制覇できた理由である。その単量が今では730グラムになった。800グラムのものもある。全国に2,400ある同業者は依然400グラム程度だから格差は増々開いている。その上、生産量もケタ違いなのである。
 再び、大平氏の登場。「この技術はね。高度なバイオ技術でもなければ大学の偉い先生から教わったものでもない。私が自分の体験とカンで編み出した職人技術なんですよ。本気になって取り組めばできないことはないんです」
 「自分に能力がないという人がいるが人間に能力の差はないんです。あるとすれば努力の差ですね。ですから我が社では不可能とかできないということは通用しません。不可能を可能にするから世間が評価してくれるんです。そうじゃないですか」

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