ここ一番の大勝負 大儲けか、破滅かにかけた男 雪国まいたけ 大平善信社長(46才)
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大西リポート 「大西リポート」は新潟県内の経営者の生き様を大西勇がホンネで紹介したドキュメントです。
日刊工業新聞記者・大西勇が取材した雪国まいたけ・大平善信社長の本音。60%ものシェアをもつ雪国まいたけが生産量を倍増させる。予定どおり売れなかったら、雪国まいたけは自らの首を締めることになるが・・・。

 
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※記事中の会社名・団体名・所属・役職等は取材当時のものです。
平成6年6月1日発行
大西リポート004
 

ここ一番の大勝負


「大儲けか、破滅かにかけた男」
雪国まいたけ 大平善信社長(46才)

気でも狂ったか?

 最近、何かと話題にでてくる雪国まいたけが生産倍増計画を発表した。正確にいうと六日町の新堀工業団地に46億円をかけて三番目のまいたけ工場を建設し、完成する来年10月には日産33トンが55トンになるという。並の会社ならさしたるニュースではない。
 だが雪国まいたけはこの10年間で全国一の会社となり、全国シェアが60%もある。60%ものシェアをもつ会社が生産量を倍増させるというのだ。 予定どおり売れなかったら日本全国にまいたけがジャブジャブあふれ、価格は大暴落。そして雪国まいたけは自らの首を締めることになる。「気でも狂ったのか?」と声が出るゆえんである。これに対し、大平善信社長は3月中旬新潟証券取引所での記者会見でこう答えた。「ええ、だいじょうぶです。まいたけの市場規模は年間九千トンに過ぎず、しいたけの8分の1、エノキタケの10分の1でしかありません。今後も需要は増えるでしょう。今回の増産分は西日本地区で売ります。あちらは未開拓市場ですので」

10年で日本一、なぜ?

 大平社長は語る。「私がまいたけの生産を始めた時、先発メーカーがありました。それが規模が小さい農家だったんですね。生産量が少ないからスーパーへ売ることもできない。近くの農協へもっていく。従って値段が安くなる。それをみて私はやるからには大量につくって直接スーパーへ持ち込もうと考えたのです」。 まいたけという商品で成功するカギは販売力でもない。知名度でもない。それは大量に生産できる栽培技術を確立できるかにかかっている。現に全国にはまいたけの生産者は二千三百九十六戸あるが、戸というように農家の経営がほとんど、工業生産しているのは同社しかない。つまり農業の分野に工業の視点で切り込んでいったのが10年で日本一になった大きな要因なのだ。それに忘れてはならないのが借金を恐れぬ度胸。
 今、雪国まいたけは売上(四十六億円)と同じくらいの借金がある。大平社長の借金保証額は44億円。大平秀子夫人も19億円保証している。会社がこけたら、自分がスッテンテンになるどころではない。末代にまで借財が残るのである。

大平善信という男

 筆者はこの人物をよく知らぬ。だが関係者の話や資料を調べるとヨネックスの米山社長や一正蒲鉾の野崎社長のようなイメージが浮かび上がってくる。 まず田舎の農家の生まれ、つまり貧乏。脱サラ負けん気。そして何と中卒である。「私は農家の長男で跡継ぎだったものですから大反対され、勘当同様の身となりました。ですから脱サラして事業を起こした時、失敗してみっともない姿はみせられない。石にかじりついてでも成功させてみせる。とそれこそ死にもの狂いでした。人間、苦しい状況に追い込まれると自分でも思いもしなかった能力が発拝できるものなんです」 昭和23年生まれの46才。六日町の五十沢中学を卒業後、両角工務店に3年間。農業に2年間。理研電具に6年間働いたあと、自分の会社「大平もやし店」を創業。そして昭和57年からまいたけ栽培へ。趣味はマラソン。

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